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大阪地方裁判所 昭和50年(む)51号 決定 1975年2月10日

主文

本件各申立をいずれも棄却する。

理由

本件各準抗告申立の趣旨および理由は、弁護人大槻龍馬他二名作集にかかる準抗告申立書および準抗告申立理由補充書記載のとおりであるから、ここにこれらを引用する。以下、これに対する当裁判所の判断を示す。

一  被告人には刑訴法第八九条第四号に定める事由(罪証隠滅のおそれ)が認められ、本件各保釈請求はいわゆる権利保釈の場合に該らない。

被告人は昭和四九年一二月三〇日および同五〇年一月二三日頭書各被告事件につきいずれも勾留中に公訴を提起され、引き続き身柄拘束中の者である。ところで、現時点においては、二、三の関係者に対する分を除き本件の捜査は大綱において終了し、かつ、被告人とともに起訴された共犯者八名のうち二名については保釈が許可され、他の六名については在宅処理がなされている点に鑑みると、被告人についても一見罪証隠滅のおそれがないかの如くであるが、本件各犯行はいずれも企業活動に関して敢行された組織的なものであるところ、被告人は本件各企業組織の頂点に立つ人物としてその活動を強力かつ独断的に統轄し、相被告人である会社役員をその意のままに駆使して来たことが窺われ、また、相被告人らが本件各犯行は被告人が指示命令に基くものであることを一様に承認しているのに反し、被告人ひとりこれを強く否認し、一切これを関知しない旨の弁解に終始している事情に照らし、被告人を釈放するときは、相被告人その他の関係者に働きかけてその強大な指導力を発揮し、今後の公判廷における活動を統制し、自己の罪証を隠滅しようと図る公算は大であると認めざるを得ず、被告人に捜査の手が延びる以前の段階で会社役員多数が参集し、前後二回に亘り捜査対策の会議が開かれた際、被告人の代弁者と目される弁護士から紛飾関係については所在不明中である被告人の実弟牛田次郎が一番良く知っていると述べてはどうかと暗に同人に責任転嫁を慫慂するかの如き助言がなされていること、相被告人の中には手帳、メモ等の関係書類をカッターで裁断して毀棄した者もあることもまた右認定を裏付けるものである。

二  被告人に対し、裁量による保釈を相当とする事情は窺われず、また勾留による拘禁が不当に長くなったとも認められない。

権利保釈に該当しないとする事由が叙上の如きものである以上、裁量による保釈を相当とする余地に乏しいことも当然であるが、事案の内容に鑑み相当長期の審理が必要であると予想される本件公判にあっては、いまだ第一回公判期日が開かれず、受訴裁判所の審理計画の樹立されていない現段階においてこれを許すことは相当でなく、また、事案の規模内容に照らし、勾留による拘禁が不当に長くなったものとも言い得ないから、刑訴法第九一条第一項により保釈を許可すべき限りではない。

よって原決定は相当であり、本件各申立は理由がないから刑訴法第四三二条、第四二六条第一項に則り、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山中孝茂 裁判官 半谷恭一 山川悦男)

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